離婚の基礎知識(11)
最終更新日:2017/07/16
離婚するにあたり、養育費や慰謝料、財産分与など様々な離婚給付が行われます。ときには高額な財産が移転され、給付する側される側ともに課税されるケースもあります。
離婚と税金に関して間違った知識で進めてしまうと、予想外の高額な税金を納めることになりかねませんので、離婚給付により税金が発生する可能性がある場合は、事前に税理士や税務署にご相談されることをお勧めいたします。
また、上記のような離婚給付に関する税金だけでなく、固定資産税などの不動産に関する税金や、手続きに要する諸費用の支払いについても、どちらが負担者になるのか(あるいは負担割合はどうするのか)を協議し、後々のトラブル防止のためにしっかり取り決めておきましょう。
財産分与や養育費、慰謝料いずれの場合も「金銭の給付」については、受け取った側も渡した側も原則として税金はかかりません。
ただし、例外的に金銭で行われた場合でも以下のいずれかにあてはまる場合は贈与税の課税対象となります。また、養育費の一括払いを受けた場合も贈与税が課税される可能性があります。
分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の価額やその他すべての事情を考慮してもなお多すぎる場合
離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
上記「1. 贈与税」の1.2.に該当するような例外的な場合を除けば、贈与税は原則かかりません。ただし、離婚前に名義変更(所有権移転登記・持分移転登記)を行ってしまうと贈与となりますので注意が必要です。なお、どうしても離婚前に分与したいときは、婚姻期間が20年以上である配偶者から居住用不動産または居住用不動産を購入するための金銭の贈与を受けた場合、贈与税の課税価格から2,000万円を控除することができ、通常の贈与における基礎控除額110万円も同時に使うことができます。
原則として課税されます。しかし、財産分与により土地や建物の不動産を取得した場合で「清算的財産分与」であれば、不動産取得税を課税しない取り扱いがされているようです。なお、「慰謝料的財産分与」や「扶養的財産分与」の場合には原則通り課税されます。
不動産の名義変更(所有権移転登記・持分移転登記)の際に課税されるもので、不動産の固定資産評価額の1000分の20(2%)がかかります。
財産分与が土地や建物などの不動産で行われた場合には、財産分与した側に譲渡所得税が課税されることがあります。しかし、そもそも譲渡益がない場合も多く、また居住用の不動産で離婚後(親族でなくなった後)の財産分与であれば、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円の特別控除が受けられるため、実際には課税されないことの方が多いでしょう。
保険契約者と保険金受取人が異なる場合には、注意が必要です。たとえば契約者を夫、受取人を妻にしている場合(被保険者は当然子供になります)、妻が保険金を受け取る際には110万円(基礎控除)を差し引いた残りの額に対して贈与税がかかってしまいます。
保険契約者と保険金受取人が同一の場合は、保険金を受け取るときに一時所得となり、所得税の対象となります。ただし、受け取った保険金から払込保険料の総額を差し引き、さらに50万円(特別控除)を差し引いた残りの額が一時所得の金額になりますので、実際には課税されないことの方が多いでしょう(課税対象となる金額はさらに2分の1にした金額)。
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産(土地・家屋)の所有者に課税されるもので、その不動産が都市計画区域内の市街化区域内にある場合には都市計画税も課税される場合があります。
移転登記の時期が将来になる場合は、固定資産税・都市計画税の負担についても夫婦間で協議し、合意しておくことが必要になります。
(1)司法書士報酬
財産分与などで不動産の名義変更(所有権移転登記・持分移転登記)手続きや仮登記手続きをする場合、通常は司法書士という登記手続きの専門家に依頼しますので、その報酬・費用の負担者も考えておく必要があります。
(2)不動産を売却する場合
売買仲介手数料、測量代、収入印紙代、引越し費用、家財処分費用などが必要になります。
(3)自動車の名義変更
車庫証明の法定手数料(県証紙代)、自動車登録の法定手数料、住民票・印鑑登録証明書を取得する際の役所手数料、行政書士に手続きを依頼した際の報酬などが必要になります。